パリに滞在して一週間。初めてのフランス国内旅行の目的地に選んだのはブルターニュ地方のモン・サン・ミッシェル。海に浮かぶ孤島にたたずむ修道院の荘厳な姿を、子供の頃に*
真で見て以来、いつか訪れることが夢だったのです。中継地として、古く美しい街並で名高いレンヌに数日間滞在することにしました。そうと決まれば列車の旅です。速さと快適さでその名を轟かす高速列車
TGV に、初めて乗ることになる記念に、張り切って一等車を予約してしまいました。
12時5分、パリ・モンパルナス発レンヌ行き。さあ、2時間15分の TGV の旅が始まります。列車が緩やかに滑り出す瞬間が大好きです。車内は暖かい色みで統一され、落ち着いた雰囲気。座席と座席の間隔もゆったりとしていてリクライニングもバッチリ。テーブルには滑らかなデザインの美しい読書灯があり、手もとをそっと照らしてくれます。ハイシーズンのためか、車内にはほとんど空席がありません。が、少しも圧迫感を感じないどころか旅の疲れを癒してくれる安らいだ空間。そう、まるでホテルの一室がそのまま移動しているかような趣きなのです。
列車では、移動中の人々をこっそり観察するのがまた楽しいのです。パソコンに向かい、黙々と仕事をするビシネスマン風の男性、手を取り合って談笑する若いカップル、ほおづえをついて窓外の景色を眺める少し悲しそうな表情の女性、時折微笑みながら何か書き物をしているきれいな身なりのおじいさん……。みんなそれぞれの理由があって旅をするのですね。列車の旅はまるで人生の縮図。さまざまな人のさまざまな側*
を垣間見ることができます。
列車はもの凄いスピードで走っているはずなのに、不思議にも窓の外の風景は緩やかに流れます。のどかな田園風景のみずみずしい緑と心地よい振動に包まれて、いつの間にかうとうとしてしまい、気がつけばそこはもうレンヌ駅。快適だった
TGV にしばしの* れを告げて降り立つと、昼下がりのうららかな日ざしの中、いかにも陽気な街が眼前に広がります。 |