TGV体験記 - レンヌ〜パリ〜モン・サン・ミッシェル
旅の目的は最終地点よりも前の道中にすでに満たされていた……。
by Kazumi Arai |
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話しかけられた私は、日本から来てモン・サン・ミッシェルへの中継地としてレンヌに滞在することを話しました。すると彼女は、私のホテルまでメトロで3つめのサンタンヌ駅が最寄りであることを示し、メトロの回数券を1枚くれたのです。
「私も旅が好き。旅人はみんな友達よ。」
と言って、笑顔で去って行きました。嬉しい出来事に心を弾ませながらサンタンヌ駅に降り立ち、ホテルまでの道のりを確認すべく地図をもう一度広げると、今度は若い黒人の男性が私をめがけて走ってやって来たのです。早口のフランス語でまくしたてる彼にただあぜんとしている私に、次は英語で話し始めました。荷物が重そうだからホテルまで手伝うと言うのです。
確かに私は歩けば歩くほど重くなる大きなスーツケースを抱えていました。でも、女の一人旅はことのほか慎重になります。私は拒否してその場を去ろうとしました。すると彼は、おもむろに学生証を取り出して言いました。レンヌ大学の2年生で、アフリカからの留学生であること、祖国の発展の為に経済学を学んでいること、初めてアフリカからレンヌに来た折、右も左も分からなかった彼を通りすがりのフランス人が助けてくれたこと、そのとき彼自身も人を助けようと決意したことなど……自分は安全な人間だから信じてほしいと、ほとんど涙ながらに訴えるのです。
彼は道すがら、レンヌで観るべき名所やおいしいお店などを教えてくれました。結局ホテルまですべての荷物を持ってくれました。そして……
「フランスには様々な人種が共存している。人種に関わらず誠実な人間がいるということを証明したかった。」
と言って去って行ったのです。翌日、私は念願のモン・サン・ミッシェルへ行きました。海の中にポッカリ浮かぶ、霧にけむったまぼろしのような島。そのてっぺんの修道院で美しい聖歌を聞きながら、旅の目的は最終地点よりも前の道中にすでに満たされていたんだな、と胸がいっぱいになりました。 |
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